つなぐ旅編集部が実際に東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は福島県福島市の旅の様子をお届けします!
福島県は、全国でもトップクラスの数を誇る温泉名所。ということで、今回は福島市にある有名な温泉地「土湯温泉」を訪れました。土湯温泉では今ちょっとアツいものがいくつかあって(お湯以外で)、そのすべてを体験してきましたよ。
(フルーツ編はこちらから)
土湯温泉ではエビ釣りがアツい⁉
土湯温泉でホットな観光スポットの一つが「エビ釣り」。どうしてエビ?という疑問を胸に、エビ釣り体験ができる「おららのコミセ」を訪ねました。
週末になると観光客の方々がエビ釣りを楽しんで賑わうらしいのですが、土湯温泉は特にエビの産地でもないはず…。スタッフの小島歩さんに尋ねるとこんな答えが返ってきました。
「実は『おららのコミセ』の親会社は、土湯温泉の温泉熱を利用した地熱バイナリー発電事業を行っているんです。発電の際の冷却水を再利用して養殖したエビを、エビ釣りというかたちで楽しんでいただいているんです」(小島さん)
近くを流れる河川「荒川」は、国土交通省の水質調査で15年連続「水質が最も良好な河川」に選出されているのだそう。10年以上連続で選ばれているのはほかに熊本県と宮崎県の川とのことで、水が自慢の場所なんですね。透明度の高いきれいな水だから、時間が経ってもエビのくさみが出ないのだそう。私もさっそく釣ってみることにしました。
釣り経験がない身として、面白いけど難しい! ピクッとアタリがきたらエビがしっかり針を飲み込むまで待たないといけないのですが、「そろそろ飲み込んだかな?」と思って竿を上げると当然のように坊主。ほとんどの方はサクッと釣れるらしいので、私はよほど釣りが下手なようです。
釣ったエビは、店舗隣の野外にあるグリルで焼いて食べることができます。味付けはシンプルに塩のみ。香ばしくておいしいのはもちろんですが、自分で釣ったと思うとおいしさもひとしお…。小島さんが言っていた通り、くさみがないので頭も足もバリバリ食べられます。
DATA
おららのコミセ
住所:福島県福島市土湯温泉町上ノ町1
定休日:火曜、水曜
HP:https://genkiuptcy.com/ホーム-2/oraranokomise/
アクセス:福島交通「土湯温泉」バス停から徒歩1分
どぶろくってウマイな⁉と目覚めるの巻
今、土湯温泉全体で力を入れているのが「醗酵」です。土湯温泉の泉質は美肌に効果があると言われ、温泉だけでなく「食」でも美肌と健康を追求しようということで注目したのが「醗酵」。「おららの酒BAR・醇醸蔵」では、発酵食品の一つ、どぶろくを楽しむことができます。
どぶろくを作っている太田泰さんはもともと地域おこし協力隊の方。「福島市がどぶろく特区の認定を受けたことがきっかけで、どぶろくを作り始めたんです」と話してくれました。
どぶろくとは、蒸した米に水と麴を混ぜて発酵させて作るお酒のこと。昔は農家をはじめ各家庭で作られていましたが、酒税法ができたことで自家醸造は禁止されてしまいました。しかし2000年代に入り、規制を緩和する「どぶろく特区」がスタート。特区内では少量のどぶろくを作って販売することが可能になり、今では全国にどぶろく醸造所が増えてきています。
「どぶろくは土着性があるものだけど、観光で訪れるようなフリーの人にもなじみのあるものだと思うんです」と太田さん。確かにどぶろくって自家製梅酒と近いイメージがあり、買うものというよりはおばあちゃんの家などにあるものというか、身近なお酒ではあります。
お店では3種類のどぶろくを販売。飲み比べセットもあるとのことで、そちらをいただくことにしました。
スタンダードな「オリジナル」(写真中央)は甘さがあり、柑橘のようなさわやかな酸味とシュワシュワの炭酸がいい感じ。太田さんによると「米は自社生産の『夢の香』を使っています。麹は、産直や道の駅を片っ端から回って試作して見つけた県地元の麹屋さんにお願いして、うちの米でオリジナルの麹を作ってもらっています。フルーティーでいい具合の酸味を出してくれるんですよ」とのこと。
辛口のシールが貼ってある「NAKED」(写真左)は、すっきりとした味わい。甘さがだいぶ抑えられ、炭酸のピリリとした刺激が強めに感じられる気がするような? 「しろわせ」(写真右)は太田さん曰く「にぎやかな味」とのことで、甘さ控えめで「NAKED」とちょっと近い印象を受けました。どぶろくってあまり飲んだことがなかったのですが、私的にかなりアリなお酒!
DATA
おららの酒BAR・醇醸蔵
住所:福島市土湯温泉町下ノ町21
定休日:火曜日(臨時休業はグーグルマップにてご確認ください)
HP:https://genkiuptcy.com/%e3%83%9b%e3%83%bc%e3%83%a0-2/%e3%81%8a%e3%82%89%e3%82%89%e3%81%ae%e9%85%92bar/
アクセス:福島交通「土湯温泉」バス停から徒歩3分
絵付け体験でこけし工人さん気分を味わう
土湯温泉は宮城県の遠刈田、鳴子と並ぶ三大こけし発祥地。ということで、あちこちでこけしを見ることができます。
もちろんこけしの絵付け体験もできます。訪れたのは6代目のこけし工人・阿部国敏さんの工房兼おみやげ屋さんの「まつや物産店」。この日、国敏さんは都内のこけしイベントに参加しているとのことで、お母さんの阿部ヒロ子さんが対応してくれました。
阿部さんによると、もともと土湯温泉は湯治場だったのだそう。1週間や10日間などの長期間滞在する人が多く、その際のお土産としてこけしが人気だったんだそうです。いわれてみればこけし発祥地の宮城県の鳴子エリアも湯治場だ。
絵付け体験は結構本格的。何も書かれていない素のこけしに、筆で顔を書き、専用の機械で体に模様をつけていきます。「土湯のこけしはね、目が細い“くじら目”で、団子っ鼻でおちょぼ口なの。どういう顔にするか考えてみてね」と阿部さん。
顔を書いて、髪の毛を描いたらいよいよ体部分の着色に入ります。土湯系こけしはしましまの服が特徴ということで、専用のマシンが登場。台座にこけしをセットして、左手でハンドルを回しながらインクと筆で模様を描いていきます。
筆は動かさずに左手のハンドルだけを回すのですが、いつの間にか筆もちょっと動いてしまっているようで、難しい! でも工人さん気分が味わえるのでかなり楽しかったです。
DATA
まつや物産店
住所:福島市土湯温泉町下ノ町25
定休日:不定休
HP:なし
アクセス:福島交通「土湯温泉」バス停から徒歩3分
温泉も醗酵もこけしも、土湯温泉の魅力を凝縮した「山水荘」
宿泊ももちろん土湯温泉。今回宿泊した「山水荘」は土湯温泉を代表する宿とのことで、その情報だけで期待が高まります。
創業から72年を迎える山水荘で印象的なのが、ラウンジから見える庭園。スタッフの髙橋郁さんが、「山水荘には“水織音(みおりね)”という屋号が付いていて、門構えから水を感じる宿になっているんです。庭園は祖父が作ったもので、ロビーからもお食事処からも見えるんですよ。また、お風呂からも滝を見ることができます」と教えてくれました。さらにホテルで提供している水は、山水荘から少し離れたところにある「栂ノ森(とがのもり)」から引いている超軟水のミネラルウォーター。とことん水にこだわっていることが分かります。
そんな水自慢の山水荘は、食事も最高。ごはんはタコの出汁が染みたタコ飯が登場。「軟水だからごはんがふっくら炊きあがるんです」という髙橋さんの言葉通り、ふっくらやわらかくてとても美味。
山水荘でも夕食の一部や朝食ビュッフェで醗酵メニューが味わえます。その中でも特においしかったのが、ウェルカムドリンクのフルーツ甘酒。自家製の甘酒と季節のフルーツを使ったカクテルで、甘酒が得意でない私が、ひと口飲んであまりのおいしさにグラスを二度見するほど。つい、作ってくれたスタッフさんに「おいしかったです」と声を掛けてしまったレベルです。
温泉は大浴場を含めて全部で4つ。さらに貸切風呂もあるので、温泉好きにはたまりません。特におもしろかったのは「淵の湯」で、なんと2階建て構造になっているんです。1階と2階に内湯があり、さらに露天風呂もあって、わけが分からないほど豪華な造り! 私は朝風呂で入りましたが、2階の内湯から勢いよく流れ落ちる荒川の滝が見えてすがすがしい気持ちになりました。
DATA
山水荘
住所:福島県福島市土湯温泉町字油畑55
休館日:不定休
HP:https://www.sansuiso.jp/
アクセス:福島交通「土湯温泉」バス停から徒歩10
温泉に山に川! 自然の恵みをとことん満喫できる場所
土湯温泉はこぢんまりしていて、とてものんびり過ごすことができて最高でした。お客さんも上品な方が多く、静かなところがとてもいい! いたるところにこけしがいるのもなんだか楽しかったです。また公共交通機関での移動だとちょっと距離があって難しいですが、車が使える場合は磐梯吾妻スカイラインもおすすめ。岩場と山々の間を山岳道路が走っていて、外国のような景色が楽しめますよ。ガス濃度が高くなる場所があって外に出て写真を撮るのは難しいですが、走るのはとても気持ちよさそうでした!
(フルーツ編はこちらから)