
今回の旅の目的地は、岩手町。「岩手町」と聞いて、「あー、あの!」とピンと来る人って、そんなに多くはないでしょう。実は私もです。分かるのは、岩手県にある町なんだろうということくらい。
しかし、ここ岩手町の最寄り駅「いわて沼宮内」は、東北新幹線の停車駅なのです。新幹線の停車駅なのに、「いわて沼宮内」という駅名も知りませんでした。なんなら読み方すらも。この駅は、「いわてぬまくない」と読むんだそうです。
とはいえ新幹線の停車駅といえばおおよその想像はつきます。「大都会とはいかないまでも、それなりにビルが建っていて、みんなが知っているチェーン店があって……。はいはい。分かる分かる、だいたい分かる」と、呑気に構えて降り立った、いわて沼宮内駅。そこには私の想像を超えた光景が待っていました。


このいわて沼宮内、新幹線停車駅なのに駅前にコンビニもビジネスホテルもないんです。ほんとに何にもない、普通の駅なのです。
しかし、その見た目が普通の駅である新幹線の駅には、私が想像していたような普通の新幹線の駅では味わえない、あんなものやこんなものなど、写真を見返すだけでまた行きたくなる魅力が詰まっていました!
つなぐ旅編集部が実際に東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は岩手県岩手町の旅の様子をお届けします!



新幹線駅から歩いて行ける「道の駅 石神の丘」
大宮駅からいわて沼宮内駅までは東北新幹線で約2時間5分ほどですが、一部の「はやぶさ」しか停まらないため、本数はそれほど多くありません。駅から徒歩で行ける宿は1軒のみでした(その1軒が予想以上に素晴らしかったのですが、それは後述します)。

まずは宿に荷物を預けて、車で3分で行けるという道の駅「石神の丘」へ。駅の西口から北上川を渡ってすぐの、国道4号沿いの丘の上にあります。なんなら駅から歩いて行くこともできます。
美術館が併設された、地元民から愛される場所のようです。
まずはぐるりと産直コーナーを回ります。岩手町は野菜の産地で、なかでも有名なのがキャベツ。「春みどりキャベツ」という商品名で出荷されていて、「岩手県産」と書かれたキャベツは、だいたい岩手町産なんだそうです。東京のスーパーで知らずに食べていたかも。

ほかにも紅玉などのりんご、ブルーベリーの加工品、惣菜コーナーには初めて見る「串もち」や、麦もちに味噌をはさんだ「味噌ぱさみ」、そしてなんとパックに入った松茸まで! 松茸は9月下旬から1カ月くらいは店頭に並ぶそうです。松茸の前でしばらく財布と相談していたのは、ここだけの話。



こちらで買えるお土産で地元の方のイチオシは、岩手町産のりんごとブルーベリーで造ったワイン「ルルとリリ」。

りんごとブルーベリーを1本ずつ買って帰りました。りんごワインは、まるで高級なりんごジュース。アルコール度数7.5%もあるとは思えない飲みやすさです。ブルーベリーワインは、思ったより甘くなくて、言われなければ普通の赤ワインだと思うかも。原材料はブルーベリーと酸化防止剤だけと知ってびっくり! ブルーベリーとブドウって似てるのか。気に入りすぎて、ネット通販で爆買いしてしまいそうな自分が怖い。

キャベツの甘さに感動!レストランでご当地グルメ

お昼は道の駅の中にある「レストラン石神の丘」で頂きます。地元の食材を使った「いわて地産地消レストラン」の二つ星に認定されているお店です。ちょうどお昼時だったので何組もお客さんが並んでいて、15分ほど待って入店。待った分だけ期待が高まる!

窓の外には芝生の丘が広がっていて、気持ちいい! ずっと窓の外を見てられます。
地元の方のおすすめのメニューは「いわてまちキャベ塩焼きうどん」。こちらとどうしても気になった、「ブルーベリービーフカレー」を注文。「やまと豚と県産和牛のハンバーグ」とか「やまと豚ロースステーキ」とか「岩手めんこい黒牛ステーキ丼」とかほかにも魅力的なメニューがたくさんありました。直感ですが、どれを選んでもハズレがなさそう。

まずはサラダのキャベツを一口。シャキッとしているのに柔らかくて、甘い! みずみずしくて、どんどん食べられちゃいます。東京で食べているキャベツとは全然違う。焼きうどんはこくのある塩味で、すごくおいしかった!

ブルーベリーのカレーと聞いて、正直「甘い?」と予想していました。ところが食べてみると、本格的なスパイスカレー。ルーにブルーベリーのピューレを使っているそうで、後から爽やかな酸味がふわっと追いかけてきます。私、酢豚のパイナップルは好き派なんですが、フルーツを使った料理を好きな人にはたまらないと思います。

岩手町の名産はブルーベリーなので、当然ソフトクリームもあります。甘酸っぱくて、思ったよりしっかり甘めでした。焼きうどん、カレー、ソフトクリーム。小食とはいったい……。
DATA
道の駅 石神の丘
住所:岩手県岩手郡岩手町大字五日市10-121-20
HP:https://isigaminooka.jp/
アクセス:いわて沼宮内駅よりタクシーで約3分
森の中に動物たちがいる「石神の丘美術館」
道の駅のすぐ隣にあるのが「石神の丘美術館」。岩手県初の野外彫刻美術館として1993年に開館したそうです。
岩手町はもともと黒御影石の産地。1973年から30回にわたって「岩手町国際石彫シンポジウム」が開かれ、国内外から招いた彫刻家たちが町の石で作品を制作してきたそう。そんな彫刻作品を見られるのがこちらの美術館なんです。


私はアートに明るくないので、美術館と聞いて腰が引けていたのですが、心配無用でした。こちらのメインは屋外展示場の「花とアートの森」。約14万平方メートルの丘に、四季の花と彫刻作品が点在しているという、要するに、花と彫刻の巨大な公園です。

私が訪れた9月下旬は、夏の花から秋の実へと季節が移り変わるころ。白やピンク、紫のユーパトリウムが満開で、赤い萩、エキナセア、ヤマボウシやツリバナの赤い実も見頃でした。ミツバチがせっせと花の間を飛び回っていて、いい香り。夏はラベンダーやアジサイがきれいなんだそうです。足元には栗のイガがごろごろ。
あちこちで目についたのが動物を象った彫刻。2020年のリニューアルで加わった、彫刻家・三沢厚彦さんの作品で、岩手町に住む動物をイメージしているそうです。



クマは姫神山を、カモシカは岩手山を眺めているんだそうです。姫神山と岩手山は夫婦関係で、浮気された離縁したという伝承もあります。岩手町の動物たち、ロマンチックではないですか!
敷地内は、全部回ると約3キロで、所要時間は30〜40分ほど。眺めも空気もよくて、ちょっとした山歩きができて、楽しかったです。天気がよくて最高でした。「花とアートの森」、おすすめです。
DATA
石神の丘美術館(花とアートの森)
住所:岩手県岩手郡岩手町大字五日市10-121-21
HP:https://ishigami-iwate.jp/
アクセス:いわて沼宮内駅よりタクシーで約3分
散歩のあとは、キャベツのソフトクリーム
山歩きでお昼食べた分を消費できた気になったので、道の駅に戻って十割そばのお蕎麦屋さん「茶屋っこ」へ。実は道の駅の産直コーナーに売っていたお餅やいなり寿司はこちらの工房で作っているんだそうです。産直コーナーで売り切れだったいなり寿司は、残念ながらこちらでも売り切れ。

東京ではお蕎麦というと冷たいほうがスタンダードな気がするのですが、岩手町ではだんぜん温かいお蕎麦なんだそうです。確かに周りを見るとみんな温かいお蕎麦を食べてる! じゃあ郷に入ってはなんとかなので、私も温かい蕎麦にする!(ちなみに冷たい蕎麦の販売は平日11:00〜13:30、土日祝日は11:00〜14:00と張り紙がしてあったので、どちらにしろ冷たい蕎麦は無理でした)

旬の野菜のかき揚げがのっていて、ナスも入っています。十割そばはつなぎを使わないので、麺は太めで短め。東京で食べるおそばは細いことが多いので新鮮でした。

デザートは、またソフトクリーム! 道の駅といえばソフトクリーム! キャベツ「春みどり」を使った「春みどりソフト」(420円)をスルーできず……。ほんのり緑色で、甘すぎず、さっぱりしています。正直、キャベツの味はあまり感じないかも(笑)。でも色がきれいだからよし。
北上川の始まり「弓弭(ゆはず)の泉」
美術館から車で約15分。町の北部、御堂地区にある「北上山 新通法寺 正覚院」へ向かいました。地元では「御堂観音」と呼ばれている天台宗のお寺で、807(大同2)年に坂上田村麻呂が創建したと伝わる仏教寺院です。

この境内にあるのが、北上川の源泉とされる「弓弭の泉」。北上川は岩手県から宮城県石巻市へと流れる、全長249キロ、日本で5番目に長い川です。その始まりが、ここなんです。
名前の由来がまたロマンチック。1057(天喜5)年、前九年の役で源頼義・義家父子が安倍氏討伐に向かう途中、厳しい暑さに兵も馬も苦しんでいました。観音様に祈った義家が、弓の先端(弓弭)を岩に突き刺すと、そこから清らかな水が湧き出した――という伝説が残っているのです。
源流には諸説あるそうですが、国土交通省の一級河川の指定では、この泉が北上川の源流とされています。


実際の泉は、思っていたよりずっとさりげない場所にありました。もっと山奥まで分け入らないとたどり着けないのかと思っていたので、拍子抜けするほど。
源泉は奥にある大きな木の根元から湧いているそう。耳を澄ますと、ちょろちょろちょろ……と小さな水音が絶え間なく聞こえます。雨が続いたあとなどは、水が流れる様子が目で見えることもあるんだとか。この一滴一滴が、249キロ先の宮城県の海まで流れていくんですね。
DATA
北上山 新通法寺 正覚院(御堂観音)/弓弭の泉
住所:岩手県岩手郡岩手町大字御堂第3地割9
アクセス:いわて沼宮内駅よりタクシーで約13分
森の奥に現れる「御堂新田の滝」
行きたかった神秘スポットはもう1つありました。弓弭の泉から車で5〜6分。丘を下った小さな谷の底にあるのが「御堂新田の滝」です。

車を降りて少し歩くと、ゴーッという水音が近づいてきて、木々の間から滝が現れました。岩肌を、白い水が幾筋にも分かれて勢いよく流れ落ちていきます。すごい迫力!

数日前まで雨が続いていたせいか、水量が多く、勢いもすごく、自然に圧倒されました。マイナスイオンもたっぷり浴びたはず。
DATA
御堂新田の滝
住所:岩手県岩手郡岩手町沼宮内30-85
アクセス:いわて沼宮内駅よりタクシーで約15分
キャベツとブルーベリーを堪能し、山と川と滝に圧倒される。新幹線の駅からほど近い範囲に、こんなに見どころがあるとは思いませんでした。岩手町は、知られていない土地を歩く楽しさを静かに教えてくれる、そんな町でした。





































