「水と森林と人を育む利根川源流のまち」として知られる群馬県・みなかみ町の情報交換会が2025年7月11日、さいたま市大宮区にある「まるまるひがしにほん東日本連携センター」で開催され、同会場で7月12日、13日の2日間開催された「みなかみ 夏の味覚展」出品された名産品の試食会も開かれた。
みなかみ町は関東北部の群馬県最北に位置し、谷川岳・三国山の麓、利根川の源流域であり「関東の水瓶」と称される自然と温泉が豊かで風光明媚な町で、たくみの里、ホタル祭りなどにたくさんの人が訪れ、観光業が盛んであり、また、自然共生型の農業の事業展開も行われている。
今回の情報交換会では、「みなかみ 夏の味覚展」で出品された名産品を試食してのだが、自然豊かで水が美味しいみなかみ町ならではの生産物はもちろん、超ユニークな駐台公務員だった阿部真行氏の活躍から生まれた台南市からの輸入品である台南マンゴーまで味わうことが出来た。
挨拶に立った茂木直人副町長は2024年春からみなかみ町に来たそうで、
「暮らしてみて、町の皆さんとさまざまな機会でお話しさせていただく中で、着任当時はわからなかった、みなかみ町のリアルな姿が見えてきた気がします。観光の町ですから、さまざまな観光名所がありますし、便利な施設もたくさんございます。
特に、これからのシーズンになりますと、ダム湖ですとか、利根川の清流を活用したウォーターアクティビティ、ラフティングやサップといったものが非常に人気です。これらは、グリーンシーズンのみなかみ町の観光コンテンツの代表的な柱の一つでございます。
従事している地元の方たちは、単にスリルや楽しみ、インスタ映えを追求しているわけではなくて、刻々と変わる水の表情を五感で捉え、それを自分の中に情報や経験として取り込んで、お客様の安全のために日々鍛錬を重ねていらっしゃる。そんな方々なんです。
その根底には、みなかみ町の自然に対する深い愛情と、この素晴らしい自然をそのままの状態で未来の世代に残したいという強い思いがある。そう感じております。観光というと、どうしても賑わいや経済効果に目が行きがちですけど、みなかみ町の観光の根っこには、人と自然の共生や、地域が持つスピリチュアルなフィロソフィー、みたいなものがあるんじゃないかと、私は感じています。
みなかみ町は、『利根川の源流を託された町』だと思っています。利根川の流域、約3000万人の方々に清らかな水を届け続ける、という使命感と責任感を、町民だけでなく関係者の皆さんと共有しながら、未来に向けた取り組みを重ねているところです。
先ほども申し上げましたが、この自然に対する畏敬の念、そして、これまで自然を守ってきた人々のプライド、さらに、みなかみ町に魅力を感じて移住された方々の新しいマインドや価値観、そういったものが今、交差して、町のあちこちで小さな化学反応が起きている。そんな状況だと感じています。
観光というのは、そうした町の『手触り感』を伝える重要な手段だと考えております。単なる娯楽やレジャーではなく、みなかみ町の『人と自然を大切にする心』を、ぜひお越しいただく皆さんに感じてほしい。そう思っています」
と、みなかみ町から伝えたい気持ちを語った。
【みなかみ 夏の味覚展】
みなかみ町は、埼玉県さいたま市の友好都市。「みなかみ 夏の味覚展」は7月12日、13日にさいたま市大宮区の「まるまるひがしにほん東日本連携センター」で開催された。旬のブルーベリーや夏野菜、みそなど約130種類が出品された。
●冷やし玉こんにゃく
群馬県は、こんにゃく芋の一大生産地で、みなかみ町でも広大な面積で栽培されている。こんにゃくをもっと手軽に楽しんでもらえるように味付けをした玉こんにゃくを冬は暖かく、夏は冷やして提供している。大きさも食べやすく、適度な味付けで冷たく食べられるのが嬉しい。
●ブルーベリー
この時期は、ブルーベリーの最盛期であり、みなかみ町の夏の特産品として注目されている。収穫時期は一般的に6月中旬〜8月下旬で、早生種(6月上旬〜7月中旬)と晩生種(7月下旬〜8月下旬)があり、甘みと酸味のバランスが特徴。「みなかみフルーツランド モギトーレ」などでのブルーベリー狩りも人気だ。しっかりした大きさと、濃い味わいが体にいい感じだ。
●のむヨーグルト
みなかみ町産の新鮮な生乳を使用している。低温でゆっくりと発酵させるため、濃厚で酸味の少ないすっきりとした甘みが特徴。洗練された生クリームを飲むようで癖になる。
●りんごジュース(100%)
みなかみ町は澄んだ水に恵まれ、日照時間が長く、一日の気温差が大きいことから、一年を通じて多種の果物が栽培されている。中でも、りんごの栽培が盛んで8月下旬から12月中旬ごろまで、数多くの品種が生産されている。のど越しさわやかで清涼感たっぷりだ。
●みなかみ湧水(天然アルカリ水)
みなかみ町の数ある水源(湧水)の中でも、最も魅力的な水質を持つ三峰山湧水を使用したプレミアムウォーター。適度なミネラルを含み、天然のアルカリ水・軟水のみからなる湧水は飲みやすい。無味無臭の水なのだが、美味しさを感じられる。
●台南マンゴー
みなかみ町の名産品ではないが、同町と台南市(台湾)は、2013年に友好都市協定を締結し、観光、物産、学生交流を通じて深い関係を築き、2023年4月17日には、みなかみ町観光協会と台南市旅行商業同業公会が友好協定を再締結し、双方の観光魅力の発信と地域経済の活性化を推進していることから、台南産マンゴーを輸入している。
2021年に3200kg、2022年に2500kgを注文し、観光スポットでの販売や小中学校の給食(「台南マンゴーの日」)に提供している。
台南市との交流は、「日本唯一駐台公務員」こと阿部真行氏(みなかみ町観光商工課課長補佐)が、2013年6月から2022年3月まで、みなかみ町職員として台南市政府に駐在したことによる。
台湾のマンゴーは世界的にも有名だが、やっぱり美味しい。贅沢だ。
阿部氏によると、
「『日本唯一駐台公務員』と言うのは、台湾のヤフーとか、中国語のニュースでよく使われたフレーズなんです。なぜかというと、日本人で唯一、台湾に駐在していた公務員だったからですね。いろんな日本企業が台湾に進出していますけど、公務員として堂々と台湾と交流していたのは、実はみなかみ町だけだったんです。今は、青森県六ケ所村がみなかみ町を参考にして、六ケ所村の職員が高雄市に行ったので、唯一じゃなくなっちゃいました(笑)。
ちょっと私のバックボーンを話すと、2006年にみなかみ町の役場に入って、7年間働いた後、2013年6月に台南に行きました。最初は5か月の出張の予定だったんですけど、いろいろあって9年間いました(笑)。
台南国際マンゴー祭りは、みなかみ町のリンゴをなんとか売り込もうって指令を受けてたんで、マンゴーとリンゴって響きも似てるし、マンゴーの輸入ルートでリンゴを輸出できるんじゃないかって、単純なアイデアでした(笑)。
今は、みなかみ町の小中学校の給食に「台南マンゴーの日」を作って、マンゴーを提供してます。地元の人に「なんでマンゴー?」って聞かれるから、名前をつけて説明しやすくして、台南でも「みなかみ町が給食でマンゴー出してる」ってニュースになって、宣伝になるんです。7月15日に給食でマンゴーが出ます」
とのことで、このユニークな活動は本にもなっている。