意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は新潟県三条市の旅の様子をお届けします!
金物・鍛冶の町のイメージがある三条市。ここを訪れたらぜひ鍛冶体験をやってみたいと思っていたのでとても楽しみです。
(グルメ編はこちらから)
駅の出口に感じる“ものづくりの町”感
今回目指すのは上越新幹線の燕三条駅。燕三条とは新潟県燕市と三条市を合わせた呼び方で、燕三条市があるわけではありません。どちらもものづくりの町として知られ、主に燕市ではキッチン用品や食器、三条市では刃物が作られてきました。そのうち、今回は三条市を訪ねます。
大宮駅から燕三条駅までは上越新幹線で約1時間半。車内にはビジネスマンの姿もありましたが、観光目的と思われる普段着姿の方が多い印象です。
今回の旅の一番の目的、鉄を打ちに行く
さっそく一番の目的でもある鍛冶体験をしに、「三条鍛治道場」へ向かいます。ここでは釘からペーパーナイフを作る体験ができるとのことで、とても楽しみ。
三条鍛治道場はJR弥彦線北三条駅近くということで、ひと駅分ですが電車に乗ります。
北三条駅から三条鍛治道場までは徒歩3分ほど。施設の近くまでくると、「カン!カン!」と甲高い音が聞こえてきて、「これはきっと鉄を打つ音だ」と興奮。この日は雨でとても寒くしょんぼりしていましたが、早く私もやってみたい!とテンションが上がりました。
三条市では古くから製鉄が行われており、江戸時代になると産業としての鍛冶が盛んになり、三条で作られたさまざまな道具や建築金具が、遠く関東まで運ばれるようになったんだそう。今回の体験でも釘を使いますが、三条市の「鍛治の原点」に触れられたような気がしてちょっと感動しました。
鍛冶体験では職人の方がサポートしてくれます。この日はオーストラリアやスコットランドなど海外からのお客さんもいて、職人さんは英語を使いながらレクチャーしていました。私もエプロンと袖カバー、メガネ、軍手を借りてさっそく挑戦!
私が申し込んだ体験は、火で熱した釘を金鎚で叩いてペーパーナイフを作るというもの。火床で熱した釘を叩くのですが、力加減が分からずおっかなびっくり叩いていたところ、職人さんから「もっと思いっきり叩いてください」とのアドバイスが。何度も火床に入れて釘を熱し直し、そのたびに力強く叩くので腕と手首のあたりが疲れる…。しかも想像よりも早く釘が冷えていくのであたふたしてしまいます。
上の写真で、赤くなった鉄が少し歪んでいるのが伝わるでしょうか。この歪みの修正や最終的な仕上げは職人さんがやってくれます。
体験の所要時間は1時間かからないくらい。完成したペーパーナイフはその場で持ち帰ることができます。私が作ったナイフは、柄のねじり部分の幅がバラバラだったり、ナイフの面がデコボコだったりしていますが、初めての鍛冶作品だと思うととても感慨深い…。
帰宅後、実際に紙を切ってみたところ使い勝手もいい感じです。次に体験するときはもうちょっと刃の部分を薄くしたいな。
DATA
三条鍛冶道場
住所:新潟県三条市元町11-53
休館日:毎週月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
HP:https://kajidojo.com/
アクセス:JR「北三条駅」から徒歩3分、またはデマンド交通停留所「28:まちやま・鍛冶道場」下車
鉄を使った「鉄グルメ」!?
燕三条駅近くの道の駅「燕三条地場産センター」では、燕三条エリアで作られた刃物やスプーンなどの金属洋食器を購入することができます。訪れたのは雨が降る平日でしたが、私が思っていたよりもお客さんが多くて驚きました。
ここでちょっと気になるものが。スイーツなど食べ物系のお土産コーナーで見つけた「食べる工場見学 鉄アイス」と書かれたポップです。食べる工場見学…!? 鉄アイス…!? どちらも耳なじみがなさすぎるワードで、めずらしいものが好きな私は購入を決定。
鉄アイスは真っ黒な見た目で、たしかに鉄っぽい雰囲気。ひと口食べてみると意外にもやさしいミルク味で驚きます。また真ん中の黒い粉の部分は竹炭とのことで、そこだけ食べてみたところ、無味。舌の上でミルク味の部分と黒い粉を一緒に溶かすと、ほんのり遠くに鉄を感じるので、ぜひじっくり味わってみてほしいスイーツです。
お土産におすすめしたいのが「ソフト鉄サブレ」です。ソフトクッキーで鉄をイメージしたガナッシュを包んだチョコ風味のスイーツで、しっとりとした食感が私好み! クッキーの箱には説明文が入っていて、「コンセプトは、柔よく剛を制す」と書かれていました。しなやかなソフトクッキーとガナッシュ(鉄)の組み合わせ。これを三条市に置き換えると、「鍛冶職人さんの柔軟性が金属加工の町を支えてきた」ということですね。
もう一つ、「鉄コーラ」「鉄メロンソーダ」というものも発見。最近クラフトコーラが流行しているので、「鉄コーラ」を買ってみることにしました。パッケージに「鉄が隠し味」と書かれているように、鉄が4.2mg含まれているそう。
シナモンやカルダモンなど、スパイスの香りが強い本格クラフトコーラです。甘さは控えめですっきりとキレのある味わいがクセになりそう。鉄メロンソーダも買ってみればよかった~。
せっかく燕三条にきたので、包丁類も物色。果物をカットするのに使っていたペティナイフが研いでも切れ味が良くならなくて、買い替えたかったんですよね。とはいえナイフのことはよく分からないので、燕三条地場産センターの鈴木清史さんにおすすめの1本を選んでもらうことに。
鈴木さんが「軽くて使いやすく、値段も手頃なこれはどうでしょう」と選んでくれたのが、片岡製作所という地元メーカーのペティナイフ。持ってみると確かに軽い。他のナイフも持たせてもらいましたが、軽くて使い勝手が良さそうなので購入することにしました。
帰宅後にキュウリとグレープフルーツで試し切りしたところ、スッと切れて気持ちがいい! 刃物の町でいいものが買えたな、と満足しています。
DATA
道の駅 燕三条地場産センター
住所:新潟県三条市須頃1-17
定休日:毎月第1水曜、年末年始ほか
HP:https://www.tsjiba.or.jp/michi/
アクセス:JR「燕三条」駅から徒歩8分、またはデマンド交通停留所「194:地場産センター」下車
全世代に刺さりまくる昭和レトロの世界を体験
「KYOWAクラシックカー&ライフステーション」という施設もおすすめ。ここには日産ダットサン1000、クラウンの第1号車など往年のクラシックカーが展示されていて、実際に乗ることもできるんです。
このミュージアムを運営している共和工業は、複合商業施設運営やソーラー発電事業などを行っている会社です。案内してくれた同社の松井義敬さんによると、かつてはここで自動車部品などの金型を作っていて、その社員教育のために集めたものを一般公開しているんだそう。三条市の金属加工技術は刃物など日用品だけでなく、輸送機器にも活かされているんですね。
私の心をぐっとつかんだのが「ホンダS800」。ボディからヘッドライトまで全体的に丸っこいフォルムですてきです。特別にエンジンをかけさせてもらったところ、おなかに響くような低音で、それもかっこよかった!
建物の半分くらいはクラシックカーの展示ですが、残り半分くらいは共和工業の歴史が分かる展示や、昭和の生活家電・雑貨などの展示があって、時間が溶ける場所でした。20代、30代には新鮮に感じられるでしょうし、50代、60代の方にはとにかく刺さりまくると思います。
DATA
KYOWAクラシックカー&ライフステーション
住所:新潟県三条市上須頃29-1 共和工業内
休館日:不定休
電話番号:0256-34-4440
携帯電話:080-2182-4387(担当:松井)
HP:https://niigata-kankou.or.jp/blog/502
アクセス:デマンド交通停留所「205:三条防災ステーション」下車 徒歩4分
改めて知る、金属加工の幅広さ
初めて鍛冶体験をしてみて、想像以上に人力で鉄を加工することの大変さが分かりました。三条市で鍛冶といえば道具ですが、一般的に「刀剣」をイメージする人も多いと思います。今回の旅を経て、「名刀」を生む刀工の技術力は本当にすごかったんだろうと思わされました。現代に残るのも納得…。
また道具だけでなく、「鉄を使ったグルメ」という斬新なものを生み出しているところもさすが「ものづくりの町」。道具、グルメ、ときたら次はファッションあたりに進出してくるかも? これからどんなものが生まれるのか、とても楽しみになりました。
(グルメ編はこちらから)