意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は新潟県三条市の旅の様子をお届けします!
私の事前リサーチでは、特徴的なご当地ラーメンがあるとか…? ラーメン大好きなので楽しみです。
(観光編はこちらから)
カレーとラーメンが合体!「カレーラーメン」
新潟県には「長岡生姜醤油」「燕背脂」など5つのご当地ラーメンがあり、その中の一つが三条市の「カレーラーメン」。カレー味のラーメンなのかな、と想像していましたが、カレーライスのライス部分が麺、という一杯です。
今回訪れた「大衆食堂 正広」の阿部圭作さんによると、三条市内には家族経営の鍛冶屋や金物屋、問屋などが多かったんだそう。誰も家事をする時間がないので出前文化が発展したと同時に、暑い夏も寒い冬も食べられるもの…ということでカレーラーメンが誕生。70年以上前から三条市のソウルフードとして親しまれているんだそうです。どんなに疲れていても、カレーの匂いに食欲がそそられるのは分かる!
お店ではカレーライス用のカレーを、ラーメン用にアレンジして提供しているため、具材も大きめのゴロゴロ系。麺にしっかりカレースープが絡む「カレーライスのラーメン版」という感じで、初めて食べる私はなんだか不思議な感じがするのですがとてもおいしい! 最初はちょっと甘めに感じるスープも、食べ進めるごとにスパイシーな辛さへと変化していきます。これはクセになる味わい…。
阿部さんから「良かったらカレースープを、ラーメンとライスで食べ比べてみてください」とおすすめされたので、途中でスープカレーを食べる時のような感じでライスをイン。
するとびっくり、なんだかカレーのスパイシーさが増した…? 阿部さん曰く「麺と比べて、ライスと一緒に食べるとカレーの味がダイレクトに伝わるんですよね」とのこと。同じカレースープなのに、麺とライスで味が変化するなんておもしろい! 三条市にきたらぜひ食べてほしい一杯です。
DATA
大衆食堂 正広
住所:新潟県三条市石上2-13-38
定休日:月曜、第3火曜
HP:なし
アクセス:デマンド交通停留所「72:レディスクリニック石黒」下車
ビジネスマンも大好き!元祖系燕三条背脂ラーメン
【観光編】で訪れた「KYOWAクラシックカー&ライフステーション」の松井さんが教えてくれたのが、背脂系ラーメンが人気の「龍華亭」です。出前文化のある三条市内では、脂のおかげでスープが冷めにくい背脂ラーメンも好まれていたという話が。
こちらでは人気の「玉ねぎ中華」をいただきます。脂の量は「大油」「中油」から選べるとのことだったので、中油でお願いしました。
スープの中から麺を引き上げるとワァッと湯気が立ち上り、脂効果でアツアツ! ガラと煮干しがベースということで、見た目よりもかなりあっさりしていてくどくないんです。これなら大油でもよかったかも~。トッピングの玉ねぎにも、アツアツのスープのおかげで軽く火が通ってシャクシャクとした食感が残り、いいアクセントになっています。
店主の阿久津誠さん曰く、「燕三条背脂系ラーメン」の元祖の流れをくんでいるお店なんだそう。先代からのお客さんのほか、出張で訪れたビジネスマンのお客さんも多いとのことで、私が訪れたランチ終了間際もラーメンを味わっているお客さんの姿がありました。
DATA
龍華亭
住所:新潟県三条市須頃1-22
定休日:月曜
HP:なし
アクセス:JR「燕三条」駅から徒歩7分、またはデマンド交通停留所「194:地場産センター」下車 徒歩5分
これぞ故郷の味!カレー風味の「半羽から揚げ」
もう一つ、三条市のソウルフードが「ひな鳥金子」の「半羽から揚げ」。鶏の半身をから揚げにしたメニューで、三条市のデマンド交通サービス「のるーとさんじょう」の運転手さんや、【観光編】にご登場いただいた燕三条地場産センターの鈴木さんも子供の頃から食べていたというソウルフードです。
※デマンド交通「のるーとさんじょう」については、この記事の後半で詳しくご紹介します!
カリカリに揚げられた衣とやわらかな鶏肉のコントラストがとてもよく、濃いめの味でビールが進みます。半身なので、むねやもも、手羽などそれぞれの部位ごとに食感の違いも楽しめて、あっさりだったりジューシーだったりと楽しい。また、衣は意外にもカレー味! カレーラーメンもありましたし、三条市の方はカレーが好きなのかな?
「ひな鳥金子」は2025年で開店50年を迎えるのだそう。お店を営む金子イミ子さんにお話を伺うと「もともと養鶏場をやっていて、夫と『から揚げを作ったらおもしろいんじゃないか』という話になって作り始めたものなんです。大人にも子供にも喜んで食べてもらえるように、みんな大好きなカレー味にしてるんですよ」と教えてもらいました。なるほど、カレー味にはそういう理由があったんですね。
半羽から揚げは普通の日のおかずとして食べられているそうで、私が食事をしている間にテイクアウトしている方の姿がありました。クリスマスシーズンには数千本も仕込んでいるそう! 「親子三代で通ってくれているお客さんもいますし、帰省すると必ず食べるというお客さんもいますよ」(金子さん)とのことで、まさにソウルフードです。
金子さんおすすめという「もつ串」は、ひと串で砂肝やハツなどいろいろな部位が楽しめます。半羽から揚げももつ串も食べたら、もはや食べていない部位はないんじゃないでしょうか。
DATA
ひな鳥金子 本成寺店
住所:新潟県三条市桜木町24−14
定休日:火曜(祝祭日その他変更あり。月2回火・水曜連休あり)
HP:https://www.ginzado.ne.jp/~hinadori/#firstPage
アクセス:デマンド交通停留所「80:桜木町中央バス停」下車 徒歩4分
バスとタクシーの中間のような「デマンド交通」とは
三条市の市街地を移動するには「デマンド交通ひめさゆり のるーとさんじょう」が便利です。デマンド交通とは、利用客の予約に合わせて運行する公共交通機関で、バス停のように決まった停留所間を走ってくれます。三条市街地エリア内の移動は距離に関わらず大人1人400円(電話予約は500円)で利用できます。
三条市の場合は電話とアプリ、LINEでの予約が可能とのことで、私はLINEで予約をしました。なお、予約は5日前から乗車直前まで対応していますが、タクシーのように呼んだらすぐ来るものではないので事前予約がおすすめなのと、乗り合いスタイルのため自分の目的地まで一直線に向かってくれるわけではない点には注意が必要です。私はデマンド交通を利用してみたかったことと初利用だったことから、時間に余裕をもって予約をしました。
停留所は市内中心部だけで約250ヵ所にあるので、ほとんどの場合目的地の近くまで行くことができそうです。私は三条市の公式サイトにあったこちらの地図(https://www.city.sanjo.niigata.jp/material/files/group/14/knowroutepamphlet.pdf)を参考に、目的地を設定しました。
あとは当日停留所に行き、車の運転手さんに名前と予約番号を伝えればOK。私が乗ったタイミングでは利用者は私一人でしたが、運転手さん曰く「主に地元の方が利用していて、午前中からお昼にかけては比較的混みあいますね。観光の方や出張で来た方も利用していますよ」とのことです。
三条グルメは思いやりにあふれている
カレーラーメンや燕背脂ラーメンなど「冷めにくく食欲がわくもの」が生まれた背景には、三条市が家族経営の職人の街だからという理由がありました。朝から晩まで、季節を問わず働き続ける職人さんに対する、食堂やラーメン店の思いやりが素晴らしい…。またカレーラーメンも半羽から揚げも、カレーの香りが食欲をそそるので、元気がない時でも食べたらパワーが出そうです。地元食材を使ったグルメはあちこちにありますが、食べる人のことを思いやったグルメはめずらしいのでは。くさくさした気分の時は、三条市グルメを思い出してカレーかラーメンを食べようかな。
(観光編はこちらから)