意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。つなぐ旅編集部が実際に東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は新潟県南魚沼市の旅の様子をお届けします!
日本を代表する米どころの南魚沼市。おいしいごはんを食べたいし、我が家の米が底をつきそうなので購入できたらいいな…と期待を胸に足を運びました。
(観光編はこちらから)
越後湯沢駅は構内が広々!
南魚沼市中心部の新幹線最寄り駅は「越後湯沢駅」。新潟新幹線の車内がまあまあ混んでいた割に駅で降りる人は多くなかったのですが、改札を抜けたらビジネスマンがいっぱいでびっくり! あとでタクシーの運転手さんに聞いたところによると、全国に支社を持つ企業の研修があったようです。
国際的コンテストで6年連続受賞した「おいしいごはん」を食べに
米の食味を審査する国際大会「米・食味分析鑑定コンクール」。1,000銘柄以上の米が集まるコンクールの国際総合部門で、6年連続金賞を受賞した米を作っているのが南魚沼市にある「関農園」です。聞くだけでおいしそうな米、買うだけではなく食べたいですよね。関農園の直売所「FARM FRONT」では、その米を使ったおむすびが食べられるんです。
フードメニューは「土鍋炊き塩むすび」の単品とセットのみ。スタッフの小松実央さんは、「リニューアル前は、新米の時期にだけおむすび屋をやっていたんです。ここでは“日本一のおむすび屋”を目指して、お米のおいしさを届けていきたいと思っています」と笑顔を見せてくれました。
おむすびを握るのは峯村さん。土鍋で炊いたごはんを絶妙な力加減で握り上げていきます。私はごはんが熱くておむすびが握れないのですが(手に持っていられない)、料理人の峯村さんは熱さを感じさせずにヒョヒョイと握っていて思わず手元をじっと見てしまいました。
塩むすびのセットには季節の野菜を使ったお惣菜やお味噌汁が付いてきます。竹の皮に乗せられて出てくるので、なんだか昔話に出てくるおむすびみたい!
おむすびは粒立ちがしっかりしていて、とてもきれいな味。甘みはそれほど強くなく、コクがあり、力強さを感じます。小松さんはこの米の味について「甘みとコクのバランスがいい」、峯村さんは「透明感があって、ピュアな味と香り」と話していて、まさにそんな感じ。おかずがなくても食べられます。すごい米だ。
小松さん曰く、2階の窓側の席は「代表の関 智晴の一番のお気に入りの席なんです」とのこと。関農園の田んぼはあちこちに点在していて、そのうちの一つをお店の窓から見ることができます。その眺めが関代表もお気に入りなんだそうで、私も「目の前の田んぼで採れた米を食べているんだなあ」と思うとなんだかとても感慨深い気持ちになりました。
関農園の米のおいしさの秘密は、土の中の微生物と、米糠や魚、昆布、カニ殻などを原料とした自家製発酵有機肥料。この肥料はアミノ酸を生み出すのですが、実は米のうまみ成分もほとんどがアミノ酸。稲が根っこからアミノ酸を取り込むことで、米がため込むアミノ酸が多くなっておいしくなるのだそうです。
せっかくなので自宅でも食べたく、お米を購入。「おいしいお米の炊き方」というリーフレットをくれるので、家でもお店のごはんの味を再現できましたよ。
DATA
関農園 FARM FRONT
住所:新潟県南魚沼市関972-4
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
HP:https://farmfront.jp/(FARM FRONT)
https://sekike.com/(関農園)
アクセス:上越線石打駅からタクシーで3分
意外と食べたことがない「辛い」マスタードがうまい
南魚沼市でちょっと珍しい作物を作っているのが「鈴木農場」。こちらでは「からし菜」を育ててオリジナルのマスタードを作っているんです。スーパーでからし菜を売っているのは見たことがありますし、おひたしで食べたこともあります。が、どこにでも売っているものではないですし、どんな風に育つのか知らないのでちょっと見てみたい。
広報の南雲優さんに、どうしてからし菜を育ててマスタードを作っているのか尋ねました。「鈴木農場はもともと野菜農家なんです。今の社長の代で加工業に参入したんですが、なかなか厳しくて…。そんな時に知人から“辛いマスタードを作ってほしい”と求められたんですね。そこで地元になじみのあるからし菜で作ってみたところ、辛くておいしいマスタードができたんです」(南雲さん)。からしと違って、マスタードはあまり辛くなく酸味が強い印象がありますが、鈴木農園のマスタードはしっかり辛くて驚きます。「雪のない地域でからし菜を育てると辛さよりもエグみが出るので、この地域に合っている植物なのかもしれないですね」と南雲さん。
鈴木農場にはカフェが併設されていて、マスタードに合うホットドッグやサンドイッチを食べられます。一番人気はマスタード作りやマスタードバーが付いたベジセット。マスタード作り体験では、小さいすり鉢に入った茶色いマスタードシードをすり潰していきます。すると次第に黄色い粒が出てきて、あの刺激的な匂いが!
できあがったマスタードをホットドッグに乗せて食べると、ツンとした辛さが楽しめます。この辛さ、今まで味わったことがない…! ケチャップをかけ忘れたまま食べてしまいましたが、「マスタードがいくらでも食べられる」ホットドッグです。
DATA
鈴木農場
住所:新潟県南魚沼市大月1200
定休日:火曜日
HP:https://www.minamiuonuma-suzukinojyo.com/suzukinojyo
アクセス:上越線塩沢駅からタクシーで10分
木の芽じゃないけど「木の芽」と呼ばれている地元の山菜とは
山に囲まれた南魚沼市では、春や秋になると山菜が多く食べられています。中でも地元で親しまれているのが春に食べられる「木の芽」と呼ばれるものなのだとか。私も山菜は好きですが、木の芽は初耳です。タラの芽みたいなことかな…と思いながら、今回の宿泊先「ほてる木の芽坂」に向かいました。ここでは季節によりますが、その木の芽が食べられるんです。
専務取締役の髙橋将人さんが「木の芽は一般的に“山椒の若葉”のことを指しますが、魚沼エリアでは“アケビの新芽”のことを指すんですよ」と教えてくれました。「雪の下から採れる山菜は柔らかくておいしいので、県外から山菜狩りにくる方も多いんです」とのこと。そんな山菜自慢の地元でしか食べられていない木の芽の味、とても気になります。
夕食に出てきた木の芽は、糸のように繊細でシャキシャキとした食感。ほろ苦い味わいがお酒とよく合います。
髙橋さんの「南魚沼らしく、コシヒカリをおいしく食べるためのおかずを意識して提供しています」という言葉通り、山菜の天ぷらにもち豚の鉄板焼き、サーモンのみそ焼きなどどれもごはんの相性が抜群。つまりお酒との相性も最高ということなので、どのメニューをお酒のおつまみにするかごはんのおかずにするか悩みながらいただきました。
温泉ということでお風呂も見逃せません。建物の屋上にある露天風呂では、越後三山(八海山、中ノ岳、越後駒ケ岳)を眺めながらの湯浴みが楽しめます。遠くに見える山並みと高い空を見ながら温泉に浸かっていると、日々の疲れが少しずつ昇華されていくみたい。
DATA
ほてる木の芽坂
住所:新潟県南魚沼市小栗山93-1
HP:http://kinomeht.co.jp/
アクセス:上越線六日町駅から徒歩10分
※木の芽が食べられるのは4月~5月初め頃です
米どころの隠れた名物「お六饅頭」
南魚沼市のお土産といえば米と日本酒かな…と思っていたところ、地元の方々に愛されているお菓子があるという情報をキャッチ。帰省した方が手土産に購入することも多いというお菓子が、「ことう」の「お六饅頭」です。
「お六饅頭」という名前がちょっと不思議ですが、その由来は「直江兼続」。店舗のある南魚沼市六日町にあった「坂戸城」の城下に兼続が住んでいて、その幼名が「与六」だったことから名付けられたのだそうです。
お六饅頭のあんこは、小豆の薄皮を取り除いて作る「皮むきあん」を使っています。こしあんよりなめらかな口当たりで、もちもち、むちむちした黒糖生地と相性抜群。ちょっと蒸しパンっぽいお饅頭なのも面白い。
店長の小杉鈴恵さんは「昔、私がここに務めることが決まった時に親がとても喜んでくれましたね」と話してくれました。「もともとは越後湯沢駅で笹だんごだけを売っていたお店なんです。それがお六饅頭を作るようになって、口コミで評判が広がって。今はたくさんの方が買いにきてくださいます」と小杉さん。私がお店を訪れた時もひっきりなしにお客さんが訪れていました。
ちなみにお六饅頭には皮むきあん(こしあん)しかないので、つぶあん派の方には「あげまん」がおすすめ。あげまん専用に作った饅頭を揚げて、カリッと香ばしく仕上げています。
「これもおいしいですよ」と小杉さんがすすめてくれたのが「越後三山」という名前のクッキー。まちのどこからでも見え、大地の恵みを与えてくれる「八海山」「中ノ岳」「越後駒ケ岳」の越後三山をイメージしたものなんだそう。
3種類とも買ってみたところ、私の手のひらから指先くらいまでありそうな大きさ! 中にはスライスアーモンドがこれでもかと入っていて、香りと舌触りのアクセントになっています。
DATA
おかしとおやき ことう
住所:新潟県南魚沼市西泉田65-1
定休日:なし
HP:https://www.okashinokoto.co.jp/
アクセス:上越線六日町駅からタクシーで6分
最高ランクのお米を作っている南魚沼市
「魚沼産コシヒカリ」と表記できる産地はいくつかあり、南魚沼市もその中の一つ。魚沼産の中でも「南魚沼産」のものがおいしく、またその中でも私がおむすびを食べた関農園周辺の塩沢地区は特にお米がおいしい地域なのだそう。タクシーの運転手さんも同じことを話していて、「川を挟んで、米の味が違うんだ」と教えてくれました。山に囲まれているこの地形が肥沃な大地を作り上げ、米のおいしさにつながるんだなあとしみじみ…。移動中にいくつかおむすび屋さんを見かけたので、あちこち食べ歩くのも楽しそう! それにしても本当にお米っておいしいですね!
(観光編はこちらから)