意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。つなぐ旅編集部が実際に東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は新潟県南魚沼市の旅の様子をお届けします!
田んぼのイメージが強すぎて、どんな観光スポットがあるのか想像できない南魚沼市。水田が多いから、大自然に触れられるとか…?と想像していたら、私の「もっと知りたい」欲をガンガン刺激してくるまちでした。何かを学びたい気分の方、南魚沼市の旅がおすすめです。
(グルメ編はこちらから)
夏こそスキー場がいい感じ!南魚沼の景色が一望できるスポット
雪の多い新潟県にはスキー場がたくさんあります。南魚沼市の石打丸山スキー場では、展望スポット「ザ・ヴェランダ石打丸山」としてシーズンオフのスキー場を開放。山の上から見る水田がとてもきれいだと聞き、行ってみることにしました。
スキー場のゴンドラって初めて乗ったのですが、めちゃくちゃ広い! 10人乗りで、天井も高く、床以外クリア素材なのでぐるりと景色が見渡せて気持ちいい。
ゴンドラから降りると心地いい風が吹き抜けていきました。眼下には家々と田んぼが広がっていて、とてものどかな雰囲気。あそこで私たちが食べている米が作られているんだなあ、としみじみしてしばらく眺めていました。
私が訪れた時はまだ田植えが始まったばかりでしたが、水が張られると水鏡のように周囲の景色を反射するのだそう。この景色も夏になれば青々として、秋になれば黄金色に染まって、とてもきれいなんだろうなあと想像できます。
スキー場を管理している会社の事業部次長、勝又健さんによると「ハーフパイプもあるので、シーズン中はスノーボードの選手の方々が練習に来るんですよ」とのこと。ハーフパイプが設置される場所に案内してもらいましたが、結構高さがあって怖い。ここにさらに雪で壁を作って、そこを滑るんだから、スノーボーダーってすごい…。
直営のカフェにも展望テラスがあり、軽食などが楽しめます。おすすめはドイツ風に仕上げたパンケーキ。耳が立っていてちょっと変わった形をしていますが、もちもちカリカリとした食感でおいしい!
景色を楽しみながらのんびり過ごせそうなザ・ヴェランダ石打丸山、デートスポットとしても良さそうです。
DATA
ザ・ヴェランダ石打丸山
住所:新潟県南魚沼市石打1699
営業期間:7月19日(土)~11月9日(日) ※冬季営業期間は別途
HP:https://ishiuchi.or.jp/green/
アクセス:越後湯沢駅からタクシーで約10分
まるで江戸時代?大河ドラマの世界?
もう一つ、景観を楽しめる場所があるのでご紹介。「牧之(ぼくし)通り」という通りで、雪国ならではの雁木通りの街並みが楽しめるんです。
ここは鈴木牧之という文筆家が生まれた場所で、それにちなんで「牧之通り」と名付けられました。鈴木牧之のことをあまり知らなかったので、近くにある「鈴木牧之記念館」に足を運んでみることに。
40年かけて雪国あるある本を出版した鈴木牧之
1770年に生まれた鈴木牧之は、『北越雪譜』という書物を残した人物。雪国の暮らしを伝えるべく、地元・越後の雪や風俗について書かれたもので、江戸でベストセラーになりました。私たちが北欧の実際の暮らしがよく分からないように、江戸の人たちにとって雪国の暮らしも興味深いものだったのかもしれません
展示された資料によると、もともと牧之は自身で本を書く予定はなく、江戸の作家たちに原稿を依頼していたそう。その中には「南総里見八犬伝」で知られる滝沢馬琴の名前も!
2階には「大雪と屋根から下ろした雪で道は高い位置となり、人が他人の家にすべり落ちてしまった」「夏の日でも山影には雪が残っていて、冷たい雪をかき氷のようにして食べる」といった、『北越雪譜』に書かれている話の内容が展示されていました。当時の雪国あるあるですかね。
牧之についてあまり知識がないまま記念館を訪れましたが、展示を見るうちに忍耐強く堅実な人柄が見えてきておもしろくなり、つい長居してしまいました。書物だけでなく俳句や絵画も残していて、才能あふれる人だったようです。
DATA
鈴木牧之記念館
住所:新潟県南魚沼市塩沢1112-2
休館日:火曜(祝日の場合は翌日)
HP:http://www.6bun.jp/bokushi/
アクセス:JR塩沢駅から徒歩10分
織機の革命キタ!塩沢紬のコースター織り体験
鈴木牧之記念館がある塩沢エリアは、雪深く湿度が高いことから麻織物の名産地でもあります。東大寺の正倉院に、奈良時代にこの地域で織られた麻布「越後上布」が宝物として保存されているほど上質なのだそう。
越後上布の特徴の一つが「越後上布の雪ざらし」で、これは太陽の熱で雪が溶けて水蒸気になるときに、殺菌・漂白作用のある「オゾン」が発生し、これによって汚れやシミなどを落として漂白し、柄をより鮮明に浮き立たせるというものです。
そんな越後上布の技術を取り入れた絹織物「塩沢紬」も作られていて、伝統的工芸品に指定されています。「塩沢つむぎ記念館」で実際に織る体験ができるということで立ち寄りました。
体験ではしおりやランチョンマットなどいろいろなものが作れるということで、私はちょうどいい大きさで織れそうなコースターを作ることにしました。ストール作りもいいなと思ったのですが、製作期間はなんと2日間ということで断念! 館長の南雲正則さんによると「県外から来た方が、3日間朝から晩まで缶詰になってストールを織りあげた」とのことで、時間がある方はぜひやってみてほしい!
体験では白系、赤系などすでにベースとなる糸が張ってある織機「高機(たかばた)」の中から1台選んだあと、横糸に使う色糸を何種類か選んで織っていきます。私はさんざん迷って緑系をベースにすることにしました。そして横糸選びでもどんな色を合わせるべきかしばらく悩み、ゴールドっぽい色の糸を選択。
高機のペダルを踏むと縦糸が上下に動くので、「手投げ杼(てなげひ)」を使ってその隙間に横糸を入れていきます。裏にローラーみたいなものがついていて、横に投げ込むとシュッと滑って糸を通せるのでとても楽しいしらくちん! 以前機織り体験をしたときは「腰で縦糸を上下に動かし、手でその隙間に横糸を通す」という地機(じばた)を使ったのですが、不慣れな私はとても混乱したので、高機のらくちんさは革命に思えます。
途中で色糸を1色追加しつつ、30分くらいでコースターが完成。意外と早くできあがって驚きました。色や太さなどデザインにこだわると余裕で1時間くらいは溶けます。
DATA
塩沢つむぎ記念館
住所:新潟県南魚沼市塩沢1227-14
休館日:なし(年末年始は休み)
HP:https://www.tsumugi-kan.jp/
アクセス:JR塩沢駅から徒歩3分
南魚沼市を訪れると好奇心が抑えられなくなる
美しい山並み、かっこいい武家屋敷の街並み、そして雪国だからこそ生まれたベストセラーと織物。文化的な側面もかなり興味深い場所でした。私が一番おもしろかったのは、自分の暮らすエリアの気候そのものをネタにしている鈴木牧之。今NHK大河ドラマ「べらぼう」を見ていることもあって、テーマの設定が秀逸で、すごいなあと感心してしまいました。南魚沼市、お米だけじゃないですね! まだまだ掘りがいがありそうです。
(グルメ編はこちらから)