
つなぐ旅編集部が実際に東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポート。今回は長野県上田市の旅の様子をお届けします!
上田市は、周囲を山々に囲まれた盆地という特殊な地形と、年間を通して雨が少ない気候に恵まれ、ワインや日本酒といった酒造りに非常に適しています。世界的な評価を受けるワイナリーと、地元に根付いた希少な酒蔵、そしてソウルフード“美味だれ(おいだれ)焼き鳥”の奥深さに迫ります。
(城下町編はこちらから)


世界に認められた「シャトー・メルシャン椀子ワイナリー」
ワイン好きなら上田に行ったら絶対訪れるべき場所、それがメルシャンが運営するワイナリー「シャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリー」です。畑の景観やワインの品質、観光体験などから覆面調査員によって評価される「ワールド ベスト ヴィンヤード 2025」で世界46位に選ばれ、6年連続ベスト100に選出されているのは日本のワイナリーで唯一だそう。
上田駅からクルマで20分ぐらいですが、せっかくなのでローカル線「しなの鉄道」に乗ることにしました。椀子ワイナリーは、上田から2駅の大屋駅で下車し、タクシーで10分ぐらいの場所にあります。




シャトー・メルシャン椀子ワイナリーは東京ドーム約6個分、約30ヘクタール弱という広大な自社畑を管理しており、本州では最大級の規模。夏が暑く、周囲の山々が壁となり台風の影響を受けにくいという上田市特有の環境と、年間降水量が全国平均の半分以下という点が、ブドウ栽培に適しているのだそうです。雨が少ないため、ブドウが小粒で凝縮感のある味わいに育つのだとか。
こちらではワイン畑やセラー見学、ワインのテイスティングが楽しめるプログラム(要予約)を複数開催しており、今回は一番コンパクトな「ディスカバリーツアー」(約100分4000円)に参加しました。


ツアー参加者は特別にワイン用のぶどうを味見できます。ワイン用のぶどうって初めて食べたのですが、甘くてびっくりしました。一般の食用ぶどうの糖度が16度程度であるのに対し、椀子ワイナリーのワイン用ぶどうは糖度が20度を超えるのだそうです。アルコール発酵には糖分が必要なんだとか。

醸造所では、品種ごとに“育て方”を変えています。ソーヴィニヨン・ブランは香りを生かすためステンレスタンクで仕上げ、シャルドネは特徴的な香りをあまり持たない品種であるため、あえて樽に入れてバニラやナッツのような香りをまとわせる。赤ワイン用のシラーは「白胡椒のようなスパイス香が世界的に評価されている」とツアーで教えてもらいました。勉強になる!

ワイン畑やセラーを見学した後は、見晴らしのいい会議室のような部屋でスライドを使った説明を受けながらテイスティングです。
待ちに待ったテイスティングだったのですが、説明に聞き入っているうちに、気づけばすっかり酔っ払ってました。覚えているのは、梅やスモモの香りがした「椀子ロゼ 2024」(3500円)がめちゃめちゃ飲みやすかったこと。個人的に買って帰りました。あと、口直しで出して頂いた「アトリエ・ド・フロマージュ」さんのチーズが美味しかった。

DATA
シャトー・メルシャン椀子ワイナリー
住所:長野県上田市長瀬146−2
HP:https://www.chateaumercian.com/winery/mariko/
アクセス:しなの鉄道大屋駅よりタクシーで約10分
つなぎを使わない十割そば「発芽そば」を堪能
長野といえば蕎麦ですよね。お昼は、つなぎを使わない十割そば「発芽そば」が有名な柳町の「おお西」さんへ。



十割蕎麦は短い茹で時間で軽い食感となりますが、麺の長さも太さも不揃いです。更科は蕎麦の芯部を使用していて、白く上品。発芽そばは約27℃で発芽させることで甘みと香りが増すんだそうです。
メニューには書いてありませんが、発芽そばと更科そばをあいもりにしてもらえます。これがどちらも美味! 大盛りにすればよかったと心底思いました。蕎麦は短く切れているのが特徴で、蕎麦粉本来の風味を感じました。

DATA
おお西
住所:長野県上田市中央4-9-8
HP:https://www.ohnishisoba.com/
アクセス:JR上田駅より徒歩で約18分
性杜氏と希少な銘酒「信州亀齢」

上田といえば日本酒も忘れてはいけません。柳町には、寛文5年(1665年)創業という歴史を持つ老舗の酒蔵「岡崎酒造」があります。代表銘柄は「信州亀齢(しんしゅうきれい)」で、フレッシュでフルーティー、そしてやや甘口なのが特徴です。
現在の杜氏(製造責任者)は、12代目の蔵元の娘である岡崎美都里さんが務めています。岡崎さんから直接お話を伺うことができました。

岡崎酒造の生産規模は年間約500石と少なく、その多くは全国の特約店(東京で約30店舗)に出荷されるそうです。
こちらの店舗では「蔵元限定品」を1人1本限定で買えます。試飲や蔵見学は行っておらず、販売のみにも関わらず、その希少な銘柄を求めて、「東京の居酒屋で飲んで感動した」というファンが次々と訪れるのだとか。



DATA
岡崎酒造
住所:長野県上田市中央4-7-33
HP:https://www.ueda.ne.jp/~okazaki
アクセス:JR上田駅より徒歩で約16分
地元で知らない人はいない「じまんやき」
上田といえば、富士アイスの「じまんやき」も有名です。いわゆる「大判焼」「今川焼」でしょうか、あんこかカスタードが選べます。どちらも100円ポッキリ。



並んでいるのは観光客というより地元の人の印象。5個単位で買っていく人が多かったです。私はあんこを1個買いました。
一口かじると生地がふわっとしていて驚きます。軽い。あんこがたっぷりなのですが、甘さ控えめでまったくくどくありませんでした。確かにこれは並んででも食べたい。
DATA
富士アイス
住所:長野県上田市中央2-10-14
HP:https://unnomachi.jp/shoplist/shop/PqwdZOTi
アクセス:JR上田駅より徒歩で約11分
上田のソウルフード「美味だれ焼き鳥」
上田市のソウルフードとして欠かせないのが「美味(おい)だれ焼き鳥」です。美味だれ焼き鳥発祥の「鳥正」の味を継ぐ、昭和56年創業の「焼き鳥つづらや」に伺いました。夕方5時で満席! 入店しようとして諦めたお客さんが何組もいました。

美味だれ焼き鳥とは、串に刺した焼き鳥を、ニンニクと醤油をベースにした特製のタレで食べる、上田独特の食べ方です。店によっては大阪の串カツのように串ごと壺にドボンして食べる作法もあるようですが、つづらやは焼き鳥の上からかけるタイプ。

つづらやではさらに、醤油とニンニクをベースに季節で味を調整し、最低でも3カ月間寝かせてまろやかさを出しているそうです。この製法により、ニンニク特有の強い臭みを抑えつつ、深みのある味わいが生まれるのだとか。


常連さんによると、まずは塩味で食べて、その後、美味だれをかけて味変を楽しむのだそうです。塩味がついているのでそのままでもおいしいのですが、タレをかけると何本でもいける強い気分に。ご飯にのせて焼き鳥丼にしても絶対においしい美味しいと思います。ニンニクの風味が今も忘れられません。

DATA
焼き鳥つづらや
住所:長野県上田市中央2-12-25
HP:なし
アクセス:JR上田駅より徒歩で約11分
お土産の定番、飯島商店の「みすゞ飴」
上田土産にの筆頭は、明治・大正期から飯島商店が作り続けている「みすゞ飴」。飴という名前ですが、りんご、桃、梅、杏、ぶどう、みかんなどの国産果物の果汁を寒天と水飴で固めた、無香料・無着色のグミのような食感のゼリー菓子です。上田駅から徒歩2分の本店は大正13年築で登録有形文化財に登録されています。




グミやゼリー菓子の類はあまり食べないのですが、このみすゞ飴は果物本来の味をしっかりと感じ、本当においしかったです。オンラインショップでも購入できるので、贈り物にも、自分へのご褒美にもぴったりです。
DATA
みすゞ飴本舗 上田本店
住所:長野県上田市中央1-1-21
HP:https://misuzuame.com/
アクセス:JR上田駅より徒歩で約2分
お酒も食べ物もおいしいって最高!
美味だれ焼き鳥って初めて食べたのですが、あの味が忘れられず、実は翌日も行ってしまいました。ワインと日本酒を買い、発芽そばと美味だれ焼き鳥、じまんやきを食べ、みすゞ飴をお土産に買って帰る。このコースを今度はプライベートで再現したいです。
































